素顔のキスは残業後に
「あのっ。さっき……どっ…いっ…やっぱりいいです」


そんな探るように見つめられたら、言えるものも言えなくなるってもんで。

たどたどしく言葉を続けた唇を閉ざすしかないじゃない!


そんな逆ギレ気味に視線を足元に落とす。

そんな私の脹れっ面を下から覗きこんだ彼は、その涼しげな瞳ですべてを見透かす言葉を告げた。



「あの。さっきのことですけど、どういう意味ですか?
――とか聞きたい?」


ひんやりとした空気に静かな声が溶け込んでいく。



「当たり?」


ハッと顔を引き上げた私に彼は僅かに瞳を細める。

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