素顔のキスは残業後に
静寂を破る木々のざわめきに紛れて、彼の声が鮮明に鼓膜まで届いた。



「――どういう意味って聞かれたら、いまは桜井とこうしてたいって思った」


少し照れたような響きに、心臓が駆け足で優しい音を奏で始める。


突然届けられた想いに、戸惑いがないって言ったら、嘘になる。


だけどこんなにも安らげて温かい気持ちになれたのは、久しぶりな気がして


この時間が長く……続いてほしくて――――
彼の背中にそっと腕を回した。



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