素顔のキスは残業後に
胸板から伝わる鼓動の響きに体の緊張がほぐれていくと、抱き締められた腕が少しだけ緩められる。


自然と引き上がる目線。


私を見つめる瞳が微かに揺れて、それだけで愛しさが積もる気がした。


愛しさ?

それとも、この状況に流されてるだけ?

そう心に問いかけると胸が震える。



「桜井…」



私の背中を離れた彼の指先が耳の裏を掠めて、優しく髪に挿し入れられる。

拒もうと思えば拒める状況は、この前と同じ。


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