素顔のキスは残業後に
「さっきは周りも巻き込んでやり過ぎちゃったけど。彼にはあれくらいでちょうどいいのよ。

あれですごい負けず嫌いなんだから。
きっと最初のコンセプトを突き通せるほどの材料を私に突き付けてくるわ」


由梨さんはそう言って薄い笑みを浮かべると、柏原さんが立ち去った扉に視線を向ける。


そんな彼女を見ていると自然と頬が綻んでしまう。


認めているから、あえて付き離す。

そんな信頼関係って――……



「いいですね」


思わずポツリと零れた言葉。

由梨さんは不思議そうに瞳をまたたかせた。
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