素顔のキスは残業後に
思い出す度に幸せな気持ちで満たしてくれる。

その言葉を思い出す。


二度目に触れ合うその瞬間。

まだ完全に雅人への想いを消化しきれてない気がして、

ただ流されているんじゃないかって、少し戸惑う気持ちもあった。


だけど理屈じゃなく、

触れ合う度に離れがたくなる唇が、言葉よりも饒舌にその迷いごと奪い去ってくれた。


そんな予感はあった。


だけど、触れ合って初めて分かるなんて――……
これって体から始まる恋ってこと? いや。それはちょっと言いすぎかもしれない。


そんなふわふわした気持ちでいると、クスッと小さな含み笑いが耳に届いた。

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