素顔のキスは残業後に
「答えないと、俺がサクッと決めちゃうけど?」


クスリと余裕げな笑い声が首筋に落ちる。

きっとこんな状況も想定内。

彼の掌の上で転がされる自分が悔しくて堪らない。


まだ朝なのに――

いや昼だって。たとえ夜だって。


灯りのある場所で堂々と晒せるほどのモノは、残念ながら持ち合わせてはないんだってば!


カーテンから射し込む月明かりだって恥ずかしいくらいだ。


だけど、これから始まる甘美な予感に、
胸の奥がキュッと微かな音を響かせてしまう。



「なぁ……」
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