素顔のキスは残業後に
隠しきれない想いを見透かさないでほしい。

祈るようにその瞳に訴える。

すると雅人は小さな吐息を床に吐き出してから、呟くようにポツリと言った。


「やり残したから、かな」


「やり残し?」


首を傾げる私に雅人は小さく笑う。

どこか懐かしむような瞳をを見せた彼は、意外な言葉を続けた。


「桜井さ。俺といるときも仕事をしてるときも、なんか無理してるんじゃないかなって。

抱えてるものがあるんじゃないかってそんな気がしてた」
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