素顔のキスは残業後に
第8章 幸せの形 それぞれの選択
「お姉ちゃん、ありがとう」
女の子の愛らしい笑顔につられて瞳を細める。
そんな私達の様子を窺っていた母親らしき女性が、慌てた様子で駆け寄って来た。
「ユカちゃん。それお姉ちゃんのでしょっ、わがまま言わないの」
「いえ、いいんです」
「でもっ」
「そのブーケ。ユカちゃんのピンクのドレスにすごく似合ってますし」
笑顔でそう答えるとユカちゃんと呼ばれた女の子は、
白とピンクのバラで作られたブーケを両手に抱えて、「やったぁー」と嬉しそうに笑った。