素顔のキスは残業後に
でも、それでも考えてしまうのは、雅人への未練? それとも女として不必要の烙印を押されことが、ただ惨めで、悲しくて、仕方ないから?

ぐるぐると頭の中を反芻する想い。

雅人の話したいことは、きっと結婚のことだろう。
社内で噂になる前に私にきちんと伝えたい。そんなことを思ってるはずだ。

義理堅く誠実なところが好きだった。

だけどいまは、そんな律義さは残酷でしかなくて、蓋をしていた感情が溢れ出しそうになる。
だから気付かれないように息をつき、心でそっとつぶやく。

大丈夫。なんてことない。
あのときの痛みを思えば、私はどんなことだって堪えられる。これからも、ずっと大丈夫だ。
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