素顔のキスは残業後に
やりきれない想いに、足元から崩れ落ちそうになった。

難しいと言われている総合職の試験。
どうしても通りたくて会社に残って勉強していたとき、マウスパッドの横にそっと缶コーヒーが置かれた。

「毎日頑張ってるな」

視線を引き上げた先には、感心するような眼差しの雅人がいた。
それから何度か試験勉強を見て貰うようになって、私達は付き合い始めた。

上司にも物おじせず意見するところが強いなって、褒められた。

3つ上の雅人に少しでも近付きたくて、我がままなんて言わない。
いつだって聞きわけのいい大人の女を演じ続けた。

そんな私を好きだって言ってくれた雅人に、弱い自分をさらけ出すなんて出来るわけない。


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