素顔のキスは残業後に
「どうするもなにも、説明しないといけないですか?」

穏やかな口調。
だけど強い意志を感じさせる彼の瞳に雅人のそれが戸惑うように揺れ動く。

「無駄な心配されなくても、これから彼女と話をするんで席を外して貰えると有難いです」

挑発的な彼の言葉に、雅人は何か言いたげな視線を私に向ける。
でもそのまま何も言わずに会議室から出て行った。


「ごめん…なさい」

「頭下げられるようなことされてない」

「嘘つかせちゃいました」

「嘘? アイツが勝手に勘違いしただけだろ」

深く垂れ下げた頭に呆れ返った声が落ちる。

やっぱりすべて見透かして、庇ってくれてたんだ。

すべて見透かされた恥ずかしさになかなか頭を上げられないでいると、お腹の前に重ねていた両手を掴まれる。
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