素顔のキスは残業後に
「悪いと思ってんならボケっとしてないで、さっさと手伝え」

手渡された資料の表紙には『B-lover』の文字。
ハッと息を呑んで顔を上げる。

「もしかして、目標予算降りたんですか?」

「まぁな。そんなわけで、これから会議だ」

「わぁ、おめでとうございます。そういうことなら、はりきって資料並べちゃいますよ!」

「はりきらなくていいから、綺麗に並べろよ」

呆れたように笑った柏原 柊司に、沈んでいた気持ちが嘘みたいに晴れ上がっていく。

このプロジェクトに入れるかは分からない。
だけど一度失くしかけたチャンスを与えてくれた彼に、感謝の気持ちでいっぱいになる。

そういえば、ちゃんとお礼を言えてなかったな。

ホワイトボードのペンの出をチェックしている彼に近付き感謝の気持ちを伝えようとすると、それよりも先に彼はぼそっと呟いた。

「元カレ、か」
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