素顔のキスは残業後に
「そうかぁ。元カレさんがねぇー。

それはちょっと辛いよね。バッタリ道端で出会ったりしたら、ねぇ……」


重いため息を吐き出した五月さんにハッと我に返る。


うわっ、心の声がついついダダ漏れになってたし…

(最近よくやっちゃうんだよね、コレ)


一瞬冷や汗が背中を伝いそうになったけれど、

彼女のその態度から『雅人』が私と同じ部署の『村瀬 雅人』だとは気付かれてないみたい。

胸を撫で下ろす前にそっと隣に視線を流す。


柏原さんはちょうど電話がかかってきていたらしく、

騒がしい店内の雑音を遮るように口元を手で押さえながら、電話をしているところだった。

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