素直じゃない
「うわー!!やべー!……なぁ!」
「……なに」
あああ、もう。
「またよろしくな、有希!」
ニヤッと笑う浅香。
ふんっ、と顔を背けるあたし。
────こうして、冒頭に至るのだ。
「ねぇ、浅香くん」
「ん?……あ、こっちは櫻野か。よろしくな」
ふいに浅香が、あたしとは反対側の隣の席に座る女子に話しかけられて、笑う。
櫻野……、って、小夜(さよ)ちゃん!?
「小夜ちゃーん!!」
浅香を通り越した向こうに向かって手を振ると、小夜ちゃんはニコッと笑って手を振り返してくれた。
いやー、小夜ちゃんは可愛いなぁ。
……あたしも小夜ちゃんくらい可愛かったら、何か違ってたのかな。
いやいや、そんなこと考えても仕方ないよね。
小夜ちゃんは小夜ちゃん。
あたしはあたし。
どんなに羨んだって、さよちゃんになれるわけじゃない。