一筋のヒカリ。
教師が黒板に席順を書き、番号を適当に振っていった。
その間に、せっかちな男子がくじ引きの箱を持ち出し、手を突っ込んでいた。
その男子・・・の言い分としては、自分は席順としてもどうせ一番最初なので変わりないから、早くやった方が皆いいだろう、という事だそうだ。

別に対して変わらないのだから、そんな無駄なことしなくてもいいだろう。
いつもなら、そう考えていた。

しかし、今の美沙は違った。
何となく、早くやりたかった。
それは、きっと、彼に会える可能性に期待しているから、だろう。
その事に、美沙自身は気がついていない。

せっかちな男子の計らいもあり、くじ引きの箱は比較的早く回っていった。
担任のおばさんは、まだ席順を書き続けていた。

その間にも、段々、箱は美沙のほうに近づいて来る。
美沙の席は後ろの方なので、籤を引くまでにはまだ時間がかかるだろう。

「席近いといいねー!」

にっこりと笑いかけてくる麻友の声も、耳に入らない。
美沙は生返事をするだけに留めた。

その後は何も覚えていない。

次に意識が戻ったのは、箱が目の前に来た瞬間だった。
美沙はおもむろに手を箱の中に入れ、一枚の紙をしっかりと掴んだ。
手を開く前に、箱をわくわくして待っている麻友に渡し、拳をもう一度ギュッと握り締める。
握った掌に、力が篭る。
ゆっくりと、拳を開く。
中にあったのは、くしゃくしゃになった小さな紙。

「・・・なんだ」

美沙は明らかにため息を吐いた。
よく考えたら、紙を見たって何も分からない。
美沙は、そんな単純な事に気が付かなかった自分に、無性に腹が立った。

「ねーねー!美沙何番?」

麻友がひらひらと自分の籤を振りながら言った。

「4番だった・・・」

がっくりときている美沙は、語尾にも今ひとつ力が入らない。

「んー?美沙どうしたの?」

何も察し得ない麻友は、不思議そうに訊いた。
美沙は笑顔を作り、なんでもないよ、と答える。

なんだか、急に馬鹿馬鹿しくなってきた。
あのひとに、逢える、だなんて。

そんな奇跡、有る訳が無い。

美沙は自嘲的にクスリと笑い、寄って来た由香と佳織とのお喋りに加わった。
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