一筋のヒカリ。
別に、七瀬の事が嫌いなわけではない。
ちょっと我侭だが、けして性格が悪いということは無い。
何処と無く憎めない、愛らしい性格である。

それなのに、美沙は何故か、七瀬と顔を合わせるたびに、気分が悪くなる。
重ね重ね言うが、けして嫌いではないのだ。
むしろ、好ましい部類に入るだろう。

でも、

と、美沙は思う。
あの子を見るたびに、何となく、劣等感を覚えてしまう。

更に言うならば、七瀬は美沙にないものを全て持っている。
美沙は、そう、心の奥底で感じていた。
自分に足りないもの、いくら頑張っても手に入らないもの―――――
そんなものを、彼女は持っている。彼女自身の手にさえ余るほど。
天然パーマとはとても思えない、エビちゃんのヘアスタイルに良く似た髪形も、
マスカラをつけていると見紛うくらい、くるん、と上を向いて長い睫毛も、
髪と揃いの、色素の薄いぱっちりした瞳も、
何もしなくても何故か焼けない、もちろんニキビなんかない、滑らかな肌さえも。

まるで、何もかも足りない美沙を嘲笑っているかのように贅沢に、そして当然のように。

それが、自分自身の勝手な思い込みであることも分かっていたが、それでも。
どうしても、気に食わなかった。

美沙には、それほどまでに、岩淵七瀬という人間は完璧に見えたのだった。

完璧な、パーフェクトな人間など存在しない――――――
その事に、美沙は全く気付いていなかった。
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