一筋のヒカリ。
「・・・・?」

七瀬が、顔を覗き込んできた。
自分の言葉に対する受けが無かったため、不思議に思ったらしい。
それで現実に引き戻されたとき、目の前、数センチほどの距離に七瀬の顔があったので心底驚いたけれど。
今日は、やっぱり、いつもと違う気がした。
何だか、おかしい。
自分が、コントロールできない。
何故、だろう。

それでも、会話は続けなくてはいけない。

「ごめん、ちょっとぼうっとしちゃった」

また、これだ。
美沙は、自身に呆れた。

「またかよー」

由香の素早い突っ込みに、周りに居た生徒数人が噴き出す。
七瀬も、笑った。
さっきの不信感など、跡形も無くなくなったんだろう。

「美沙ー、寝なきゃダメだよー」

麻友が、微妙にずれた言葉を発した。

「ちゃんと寝ないとね、体内時計っていうのが狂って、毎日時差ボケみたいになっちゃうんだよーっ!」

必死で主張する麻友の姿が可笑しくて、美沙もクスクスと笑った。

「でね、それでね・・・」

「静かに」

まだまだ喋ろうとした麻友の言葉は、ありきたりな教師言葉で中断された。
溜まっていた生徒達は、仕方なくばらける。
美沙も、机を引きずりながら目的地へと移動する。
自分の意識とは別に、胸の鼓動が速まった。
体中に、ドキドキが広がっていく気がする。

早く、早く。

自身の全てに訳も無く急かされて、美沙は何となく焦る。

早く、早く、早く・・・・

時間にすれば、十秒ほどしか経っていないだろう。
それでも、美沙にとっては、一時間にも、それ以上にも、永遠とさえ感じられた。
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