【B】姫と王子の秘密な関係




「気に行った?
 音羽ちゃんに誘われて、知り合いに作って貰ったんだ。

 忙しくて、まだ一度も袖は通してないけど
 次のイベントで会わせられるのを楽しみにしてるよ」

「アキラさんが約束守ってくれて……私も凄く嬉しいです。

 ここ暫くは、私の勉強に付き合ってくれたり、お父さんの夢を叶えるために
 高崎さんも凄く忙しい時間が続いたから、お互い出来なかったですよね。

 次のイベント楽しみです」

「俺も楽しみ。
 それより、音羽ちゃんさっきから俺の呼び方が混ざってる。

 俺は音羽ちゃんにとって、アキラ?高崎さん?それとも……晃介?
 どのポジションになるのかな?」



ドキドキの質問。


返答を待ってる、彼の顔も真剣そのもので。



アキラさんは言いやすくて、高崎さんは仕事上の癖?

晃介さんは……声に出していってみたいけど、
特別過ぎて言い出せない。


そしたら……やっぱり、アキラさん?



「……アキラ……さん」


そうやって告げた途端に、高崎さんの表情は一気に陰って
貌が冷たく凍り付いていく。


「あっ、ごめんない。
 私……そう言うつもりじゃなくて……」

「そう言うつもりじゃないって、どう言うこと?
 
 アキラって俺を呼んだってことは、
 君にとっては、俺はレイヤーのアキラとしての存在価値しかないってことだよね」


考えて伝えたはずの言葉が、
大好きな人を傷つけてる?



「私はアキラさんも高崎さんも傷つけたくないわけじゃない。

 高崎さんは、私の小さい時からの王子様で、アキラさんとして出逢ったときも王子様で、
 高崎さんとして出逢ったときもそう。

 ずっと変わらない。
 アキラさんって言ったのは、呼びやすいし……秘密の呼び名っぽかったから。
 高崎さんを選ばなかったのは、他人行儀する気がしたから。

 でも本当に呼びたかったのは、晃介さん。
 でも敷居が高いの。

 さっきも、高崎さんは綺麗な女の人と居た。
 それに……アキラさんは、こんなに凄いマンションで生活してる。

 大好きなのに、知れば知るほど釣り合わない気がして
 自信を喪失していく。

 ねぇ……アキラさん、……好き……。

 この苦しさどうしたら解放できるの?」



我ながら思い切った行動に出たと思う。

だけど弁明したかったのと、自分の心の打ちを一気に吐き出したくて
私はまくしたてるように声に出した。


最後の言葉と被るくらいのタイミングで、
私をギュッと抱きしめて包み込んでくれる、
晃介さんの力強い腕を感じた。


「音羽ちゃん、ごめん……追い詰めた。
 俺はさ、ずっと俺を晃介として見てくれる人を求めてた。

 だからアキラって言われて、イラっとしたと同時に悲しかった。
 けど……音羽ちゃんに言われて俺も反省した。

 いきなりは呼びづらいよな。
 ハードル高いよな。

 でも俺は、遠野音羽を大切に思ってる。
 年の差もあるし、俺はまだ未熟だし、これからも泣かせることもあるかもしれない。

 だけど……一緒に隣を歩きたいって思ってる。
 付き合ってくれないか?

 晃介として……ありのままの俺自身と」


突然の告白は、あまりにも早すぎて
狐につままれたみたいに、本当に現実だったかどうかがわからなくなる。



無意識に手を伸ばすのは、私自身の頬。

ムニって抓ると、痛みが走る。
< 101 / 129 >

この作品をシェア

pagetop