【B】姫と王子の秘密な関係



寝る間を惜しんで働き詰める遠野オーナーは、
桜川一丁目店で仮眠をとりながら働き続ける。


奥さんである店長は、向坂店を切り盛りするようになるものの
家族が三人揃うことはほとんどなくなってしまったようだった。



家族が分解してしまうことを危惧する音羽ちゃん。


そんな彼女の心を救うには真実の究明しかない。



俺は兄の職場でもある警備部の扉を叩いた。




「晃介、来ると思ってた。

 奥の部屋に居る。
 用事があるものは、インタホーンを鳴らしてください」



警備部の関係者に声をかけると、
由毅兄さんは、奥の方へと歩き出す。



奥の扉の前で、セキュリティーを三つほど解除しながら
辿り着いた一番奥の部屋。


室内の壁いっぱいに、
モニターが並べられた部屋へと通された。




「すげぇ。
 警備部ってこんなふうになってたんだ」

「まぁな。
 僕たちは、この部屋で365日24時間。
 
 関係各所に設置された
 防犯カメラのデーターを一手に引き受けて収集、監査している。

 晃介、これが今回フレンドキッチンの桜川一丁目店の防犯カメラ情報」


由毅兄さんがコンピューターを操作すると、一部のモニターが桜川一丁目店を映し出す。


店舗内にお客様にもスタッフにも目につくように設置されている防犯カメラの数と、
現在、映し出されてる映像情報。

設置カメラの倍以上の情報?


「このカメラ使ったら、従業員の素行調査も勤務態度もお偉方に筒抜けだね」

思わず零れる本音。

「このデーターは警備部からの持ち出しは不出だよ。
 だからこそ、僕たちが監査するんだよ。
 各企業から要請があれば、それに基づいての素行調査を含めて」
 
「警察や探偵顔負けだな」

「僕も最初は抵抗があったよ。
 会社に関わる人間を監視しているみたいで、盗み見している気がして。

 だけど今はこの役割に誇りを持ってる。
 今回もその役職が高じて、晃介の手助けが出来る」



兄さんはこういうと、盗難当日のスタッフが
外から入ってきた人間に脅されて、事務所に立ちいらして
金庫のカギを解除しているのがわかった。


時間帯は、深夜帯ではなく……昼間の時間帯。


一緒に働いているスタッフが、ウォークインの品出しや外掃除に出掛けている間に
そのスタッフは、外部者を事務所に入れて大胆な犯行を引き起こしていた。


店のお金を盗んだ外部犯は、その後もただの客に成りすまして平然とフロアーを散策し
アイスクリームを購入して、何事もなかったように店内を後にした。


そんな感じで、ここ五日間の売り上げ盗難が行われていた。

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