【B】姫と王子の秘密な関係
20.朝焼けを目指す星 -晃介-
遠野オーナーが倒れた翌日、
俺は兄さんに呼び出されて、早谷の警備部へと再び踏み入れた。
警察よりも手広く深い情報網で把握された調査結果。
その書類を引き寄せて黙って目を通していく。
*
桜川一丁目店 売上金盗難事件
首謀者
・里岡 充(さとおか みつる)
里岡充と、桜川一丁目店の接点は、遠野オーナーご息女・遠野音羽。
遠野音羽 路上暴漢未遂。
元、梁田オーナー時代の桜川一丁目店店舗スタッフ。
オーナー交代時に、面談で落とされる。
・江崎 菜々美(えざき ななみ)
里岡の彼女であり、桜川一丁目店店舗スタッフ。
・持田 恵介(もちだ けいすけ)
フレンドキッチン桜川一丁目店店長。
前梁田オーナーの頃より、信頼厚く勤務態度も良好。
だが現在、父親である持田圭吾(もちだ けいご)が
ギャンブルで負けた借金返済の為、生活に追われている。
そんな持田が、一瞬の気のゆるみから関わる形になった、
当時、まだ未成年だった江崎 菜々美。
犯行動機(推測)
*
淡々と綴られる今回の一連の事件内容。
調査資料に綴られていることは、
俺の想像を超えるものだった。
世界は広いように見えて狭いと言うべきか、
全ては最初から仕組まれていたのだと考えるべきか。
その後の犯行の推測に記載されていた内容としては、
持田店長が当時のことを江島に持ち出されて脅迫されて、
犯行の手助けに及んだものだろうと記されていた。
音羽さんにあの日、路上で絡んだだけでも気に入らないのに
あの時の高校生が、大人を脅迫して
今回の売り上げ盗難事件を考えたことがびっくりだった。
「兄さん、その件はどう処理するんですか?」
「会長とお養父さんから、
僕がやりたいように手をまわしていいことになってる。
マスコミをうまく利用しながら、警察も動かそうと思ってる。
会長とお養父さんの許可が出た今、警備部から持ち出し禁止のデーターを
特例で警察に状況証拠として提出することも出来る」
「兄さん、その前に俺に持田店長とだけは直接話し合わせてください。
彼の本音が聞きたい。
500万もの金額の行方も気になる。
そのお金は、里岡と江崎だけが受け取ったのか、
持田店長にも口止め料があったのかどうか。
そして叶うなら、逮捕と言う形ではなく持田店長には出頭してほしいし
遠野オーナーにも謝罪してほしい」
随分、偏りすぎてる判断かもしれないけど
そう思わずにはいられない。
あの高校生二人には、
少し痛い目にあって貰わないといけないだろう。