【B】姫と王子の秘密な関係


早谷の権力を誇示するようで、
俺自身も面白くなかったけど、本来なら市長の息子として揉み消されてしまう
闇に葬られる事件も、早谷の後ろ盾があれば、警察すらもまっとうな方向へと動かすことが出来る。

時として、諸刃の剣にすらなり得てしまう、早谷の権力。

日本だけじゃなく今では、世界の財閥ベスト10の中に入ってしまう一族の人間と言う強さ、恐ろしさ。

そう言ったものを、この瞬間に身を染みて学習した。


当然、警護体制も強くなるわけか……。

それを思うと、俺は……結構好き放題させて貰ってるんじゃないだろうか。

そんなことすら、思えるようになった。


それをさせてくれてるのは、会長を常に説得してくれてる
養父さんと養母さん。

そして多分、一番大変なポジションに居るのは
由毅兄さんとその部下たちなのかも知れないとすら思えた。



現に今も、桜川警察署内に一般人に紛れて
俺を常に護衛している存在に意識が向く。



どれだけ早谷の名に縛られないように隠れようとしても、
高崎を名乗ろうと、アキラを名乗ろうと、俺は今までもこれからも
早谷晃介以外にはなり得ないのだと言う現実。


そんな些細な現実を受け入れるのに時間をかけ続けた。




「いつも有難う。
 お疲れ様、今から多久馬総合病院に移動します」


一般人を装った護衛に近づいて、
そっと声をかける。



たったそれだけのことなのに、その護衛は驚いたような表情を見せて
背後に付き従う様に連なった。




「晃介坊ちゃん、私の存在に気が付くとは流石ですね。
 実父であられる、幸晃さまも私の存在に気が付かれました。
 お二人以外では、由毅様でしょうか?

 会長直属の警備部に所属します、元(ゆぁん)と申します」



元(ゆぁん)家。

香港を拠点として、世界の重役たちのSPを担う一族。

元家の人間は、お金を積んで護衛するものを決めるのではなく、
元家の人間自身が、自分で護衛すべき存在を選ぶのだと風の噂で聞いたことがある。



「元家の方が、早谷にもいらしたとは思いませんでした」

「こちらこそ、早谷晃介様。
 高崎幸晃さま亡き後、私に護衛をしたいと思わせる生まれながらの気質。

 晃介様との出逢いに感謝しております」


早谷の人間としての俺自身を自覚した後は、
もうコソコソと隠れることなどせずに、
早谷の名で、俺直属のハイヤーを呼び寄せ、元にも同席させたうえで
多久馬総合病院へと向かった。



暫くすると、俺の携帯電話に、




里岡 充と江崎 菜々美の逮捕の一報が届く。


< 118 / 129 >

この作品をシェア

pagetop