【B】姫と王子の秘密な関係
21.明かされた秘密 二人の未来 -音羽-
お父さんが心筋梗塞で倒れて、
意識が戻った日、主治医の院長先生から今後の予定を聞いた。
入院期間は10~2週間。
2週間後には、
退院を目標として治療計画が作成されていた。
行政指導と言う名の、お国のお達しらしい。
ちょっと早すぎるんじゃないかなって言う不安は残るけど、
それどもお父さんが、病院を早く退院したいって言ってるから
その気持ちも尊重したい。
だけどお父さんのことだから、退院したらまた無理するような気もして
家族の負担も大きくなっていく。
そんな時、晃介さんがびっくりするような契約書を手に
お父さんのもとを訪ねてきた。
お父さんの入院期間、
晃介さんが代理オーナーを引き受けるという内容だった。
契約書に目を通した途端は、私はお母さんと顔を見合わせて
お父さんの方に視線をうつす。
書類には、すでに本部の承認後らしく本部側の社印がスタンプされていて
本部長名義での承認が得られていた。
「若輩ですが、SVの研修に入る前にオーナー研修も俺は行ってます。
遠野オーナーが入院・静養中、
俺に向坂店と桜川1丁目店を預からせてください」
晃介さんは、そう言うとお父さんに頭を下げた。
「高崎さん、そんなことまでして貰っていいんですか?」
お母さんは、申し訳なさそうに問いかける。
「晃介さん……」
「遠野夫妻、音羽ちゃん。
これは俺にとっても勉強になるし、大切な時間なんだ。
だから気にせずに任せてほしい」
晃介さんは再び、頭を下げる。
「お父さん」
私はお父さんの背中を押したくて、名前を呼ぶ。
「貴方……今は高崎さんに甘えませんか?
高崎さんは、音羽のいい人なんですよ。
それに……高崎さんのお人柄は、ここ暫くの付き合いで
おわかりでしょう?」
お母さんがゆっくりと告げる。
お父さんに正面切って、音羽のいい人って紹介された時は、
ちょっと照れくさかったけど、だからこそ晃介さんも
我が家のことを家族みたいに思ってることが、お父さんにも伝わればいいなって思った。