【B】姫と王子の秘密な関係
「アキラさま、本物に逢えて嬉しいです」
「本物ってなんだよ。
まぁ、せっかく近づけたんだ。
一枚、後で撮ろう。
その前に、次の子の相手だな」
戸惑ってる、伊代のレイヤー仲間。
確か【おとは】と【かず】だったかをそのままに、
俺は再び、写真撮影列へと戻って
女の子たちへサービスしていく。
望むままのポーズで抱きしめながら、
ひと時の夢を提供する。
ようやく撮影の列が途切れた後、
俺はもう一度、伊代たちの元へと戻った。
「悪い、向こうで姫君たちに絡まれてた」
あえて……口にするのは、
姫君っと言う単語。
素で言うには、恥ずかしすぎる言葉も
この場では、サラリと口から滑らせてしまう。
「じゃあ、まずは舞と瑠花を前にして
一【はじめ】と総司と歳で、後ろ固めてみましょうか」
俺が合流した途端に、
伊代が撮影の立ち位置を告げていく。
俺たちの手持ちのカメラを通りががった人に預けて
撮影をお願いすると、撮影が始まった途端に
一斉にフラッシュが光りはじめる。
鳴りやまないシャッター音がひと段落するまで、
俺たちは同じポーズで、その場に留り続ける。
そして撮影会がひと段落したところで、
このメンバーのまま近くの喫茶スペースへと向かった。
歩いていく最中、
今日紹介されたばかりの伊代の友人。
乙羽と呼ばれていた彼女が、
心なしか、加減が悪そうに映る。
この熱気と暑さ。
水分補給のタイミングを逃すと、
熱中症にもなりかねない。
瞬時に自販機を探す俺自身。
スポーツドリンクを手に入れて
少しでも飲ませることが出来たらいんだが。
そうこうしている間に、
彼女は自分自身で自販機を見つけて、
財布からお金を取り出すと、スポーツドリンクを購入して
少し口に含んだ。
「救護室行く?
今日は暑いからねー」
「あっ、大丈夫。
すぐに落ち着くと思うから」
俺の問いかけに、
まだすっきりしてなさそうな体調を隠して
返答する彼女。
いやっ、大丈夫って言葉使い間違えてるな。
ボーっとしてるだろ。
そんなことを思いながら、
着物の袖の袂に潜ませてある、
予備の冷え冷えシートを手に取ると、
彼女の額へとくっつける。
彼女の口形が、
声が出ないまま『気持ちいい』っと動いて
そのまま目を閉じて、
その冷たさを実感してるみたいだった。
真夏のコスプレイベント。
熱中症予防に、
いろんな対策は必要だろ。
「あっ、わっ……私」
慌てて我に返った彼女は、
どうしようと、言わんばかりに顔に出てる。