【B】姫と王子の秘密な関係
1.幼い日の思い出 魔法の時間 -音羽-
「ねぇ、パパ・ママ何処?」
花火の音がドーン、ドーンっと打ちあがる中
私は一人、沢山の人が溢れかえる中を
必死に何度も人にぶつかりそうになりながら
探し続ける。
瞳から溢れでる涙は、止まることなんてなくて、
目を何度も何度も擦りながら
ただパパとママを呼びながら歩き続けた。
ふいに力強く伸ばされた腕に引き寄せられる私の体。
「ほらっ、泣いてばかりじゃ見つからないだろ。
迷子なんだろ」
手を引かれながら少し人通りが少なくなった場所で、
その男の子が差し出してくれたのは、
ハンドタオルと、お祭りの屋台で買っただろうリンゴ飴。
男の子から手渡された、タオルで涙を拭いて
手渡されたリンゴ飴を一口カプリ。
思わず笑みが零れた。
「笑ったな」
「なに?」
「泣いてるより笑ってる方が可愛いよ。
それより、迷子なんだろ?」
「音羽は、まいごじゃないよ。
まいごなのは、パパとママなの」
「おいおいっ。
いいか、お父さんとお母さんとこんな祭りの日にはぐれてしまったら
それを迷子って言うんだよ。
迷子は君?
わかる?」
「音羽……まいご?」
迷子、そうやって断言されてしまったら
凄く悲しくなってまた涙が止まらなくなった。
「大丈夫、君は一人じゃないよ。
お父さんとお母さんが見つかるまで、
お兄ちゃんが傍に居るし、一緒に探してあげるから……」
*