【B】姫と王子の秘密な関係
4.現れた婚約者候補 止める心 -晃介-
夏のイベントから、
すでに1ヶ月が過ぎようとしていた。
9月に入った頃、俺の元に養父からの電話が入る。
「はい、晃介です」
「私だ。
会長の好意により、晃介にお見合いの話が来た」
好意って……押しつけだろうが。
そんな拒否権すらない癖に。
俺はビジネスの為の道具。
恋する自由など存在しない。
存在しないのは、恋愛だけじゃないか……。
早谷晃介として生きる俺には、
一切の自由が存在しない。
正しいのはこの言い方なんだろう。
「わかりました。
待ち合わせ場所は?」
「今日19時。
うちのコンチネンタルホテル、最上階」
「わかりました」
用件のみを告げて、俺は電話を切った。
時間は17時半。
コンチネンタルまでの移動を考えると、
そろそろ支度しないと間に合わないか。
そう決めると、俺は軽くシャワーを浴びて
スーツに着替えを済ませると、
早谷晃介としての仮面をつけて屋敷を後にした。
玄関先には、すでにハイヤーが到着している。
俺が乗るハイヤーの前に、
もう一台、用意されているリムジン。
リムジンは兄専用車。
兄の専用車には、
専属運転手である大蔵が車の傍で待機してる。
俺の方は一族と提携するハイヤー業者から
派遣された、黒塗りのベンツが同じように止まっていた。
「行ってらっしゃいませ。
晃介坊ちゃま、由毅坊ちゃま」
川本執事が告げた名前に、
久しぶりに会った義理の兄の姿を見る。
「由毅兄さんは今からどちらへ?」
「俺は櫻柳桜吏さんの元へ」
兄さんが告げた名前は、
すでに婚約発表も終えた、フィアンセの名前。
櫻柳財閥の御令嬢である桜吏さん。