【B】姫と王子の秘密な関係
「どうした?
音羽、何かあったか?」
電話の向こう側から聴こえてくる声は、
眠そうな父親であるオーナーの声。
「寝てたのに御免。
小川さんのご指名入りました」
そうやって告げると、
電話の向こう側でお父さんは溜息をついた。
「わかった。
降りるよ、母さんは?」
「二人ともご指名」
「そう。
すぐに準備しておりるから、暫くお願い」
電話を切ろうとしてるお父さんに、
私はもう一つ、告げる。
「お父さん、小川の他にも今日
若い男の人来てるから」
「わかった」
用件を伝えると、私は受話器を置いて
和羽の待つレジカウンターへと向かった。
交代用のレジは、
すでに2台とも和羽が中間点検をしてくれていた。
「和羽、有難う。
先に上がって貰ったよ」
「うん」
「じゃ、確認宜しく」
そう言って手渡された中間点検の内容を確認して、
そのまま和羽の責任者番号から、私の番号へとスライドさせた。
これで私の勤務が終わるまでは、
2レジが私の専用レジ。
「誰だったんだろうねー」
カウンターの中で出来る、
惣菜の仕込みをしながら、
私たちは見慣れない小川と一緒に来てた
その人の噂話。
ケースの中に出来上がったばかりの惣菜を
パックに詰めて並べながら、
管理表に仕込み時間と廃棄時間を打ち込む。
そうこうしてる間に、
自宅から降りて来ていた両親が、
私と和羽のいるカウンターへと近づいてきた。
「音羽、檜野さん。
マネージャーが呼んでるから、
事務所に移動してくれるかな?
レジはお母さんが見てるわ。
音羽、レジ借りるわね」
そう言うと、
お母さんは私が使ってたレジの前に立った。
お父さんの後に続いて、
私と和羽は事務所の中に入る。
げっ、嫌な空間だよ。
ストコンの端末の前に並べられた
机に溢れる資料。
その資料は、先日の強制発注商品に関しての
成績表。
エリアごとに、1位から最下位まで
全ての店舗名が細かく記されてる。