【B】姫と王子の秘密な関係
ピピピっ。
突然、目覚ましの音が響いて
私は真っ暗な中で目を覚ました。
枕元の携帯で時間を見ると午前三時。
起きなきゃ。
まだ眠気の残る体を目覚めさせるために体を起こして
部屋の電気をつけると、
真っ直ぐにシャワーを浴びにバスルームへ。
熱めのシャワーを浴びながら、
久しぶりに見た幼い日の夢を思い起こして
思わず笑みが零れ落ちる。
あの日、迷子の私を支えてくれた
私の王子様。
王子様の名前も、王子様の顔も覚えていないけど
それでも……私にとっては、大切な人。
バスルームから部屋に戻って、顔と髪のお手入れ。
その後、お店の制服に袖を通して階下へと降りた。
「おはよう、お父さん」
事務所の机でモニター越しにレジの様子を確認しながら
作業をしてるのは、この店のオーナーでもある私の父。
遠野覚【とおの さとる】。
「おぉ、音羽すまないな」
「大丈夫、大丈夫。
ほら、お父さんこそ、8時にはまた仕事なんだから
早くあがって休めば」
そんな会話をしながらも、
お店のストアーコンピューターで出勤作業。
そのまま私は、フロアーに仕事に出る。
最初はカウンター周りの消耗品のチェック。
消耗品って言うのは、レジ袋・お箸・フォーク・スブーン・デザートスプーン・お手拭きなど
お客様が購入された商品を食べやすいように添えるアイテム。
その後は、レジ点検をすかさず終えて私の責任者番号へと変更させる。
そんな作業をしながら、こんな深夜時間にも関わらず
お店に来てくれるお客様の対応。