【B】姫と王子の秘密な関係
お父さんに促されるままに
指定された場所に、和羽と肩を並べて立ちながら
私はその成績表へと視線を向ける。
一位の欄に記入されてるのは、
うちの店から徒歩20分くらいの、
専門学校の正面にある店舗。
そこから視線を下すこと8段。
八位の順位に名前が書かれてるうちの店舗。
ほらっ、見た事か……。
売れてないんだから、売れるわけないじゃん。
あちらさんは、学生に売るのに対して
うちの店は、じいちゃんばあちゃん。
結果は一目瞭然じゃん。
なんて思いながら、小川の言葉を待つ。
「見ての通り先日のドリンクの成績だ。
この結果に対して思うことを、
レポートして次の訪問までに書き上げること。
次回の企画対象商品の一覧を渡す。
既存在庫をチェックして、帰るまでに提出してくれ」
って、おいっ。
他に言い方、ないんかい?
ってか、成績が出なかったの
アンタに非はないんかい?
っと再び、苛立つ心を必死に抑え込む私の隣、
和羽は、二枚の用紙を受け取った。
そんな私たちのやりとりを、小川の傍に控えて
じっと見ている男。
やっぱり……見た事ないなー。
そう思いながら、視線を向けると
その人と視線があってしまって、慌てて反らす。
「あぁ、高崎。
ここの店舗スタッフだ」
いきなり小川が私たちの話題を、控えていた人にふる。
「お疲れ様です。
小川SVの傍で補佐しつつ研修させて頂くことになりました、
高崎晃介です」
後ろに控えていた人は、
柔らかい優しそうな口調でゆっくりと自己紹介をする。
高崎さんって言うんだ……。
小川の下で研修って、
ある意味、めちゃくちゃ不幸じゃん。
そんな同情にも似た感情が湧き上がってくる。
「高崎君は来年春から、入社が決まっている。
今回は上の意向で、入社前に俺が預かることとなった」
なんて小川は、
自慢げに言い放つ。
いやっ、得意げに話されるようなことじゃないし。
アンタの営業発注のおかげで
うちの店、ヤバいんだから。
うちの店をアンタの
出世の為に利用すんなっての。
同じ空間に居るだけで、
イライラして、胃がキリキリしてきそうだから。