【B】姫と王子の秘密な関係


「音羽さん、この棚一段に並べられるのは何列?」

「10列です」

「10列の中で、音羽さんが棚割しているのは5種類の袋菓子を2列ずつ
 2フェイスで展開してる。

 だけど実際はどうかな? 

 5種類の中で一番売れてる商品と、売れていない商品。
 1日の売り上げで出来る売り上げの差は、この数字。

 数字で明らかに証明されている以上、お客様のニーズはこの商品。

  だったら俺ならこうやってプロデュースしていくかな」



高崎さんが始めた棚替えは、一番人気商品を三列。
次点人気商品を二列。

そしてこの小川さんの強制発注のお残り。

あんまり売れていない商品を、
何故か在庫をかかえている背景もあって2フェイスにして
並べる配置を変える。



同じ商品を並べているのに、
さっきまでと違ってガラリと印象がかわるゴンドラ。



「随分と表情が変わってきたんじゃないかな?

 この袋スナックの商品。
 これは小川SVに寄る強制発注の商品だよね。

 だけどこのお店では売れていないけど、
 他のお店では売れているし、この商品を開発するのに製作者側は
 大変な時間を費やしてる。

 だから販売する側も、売れないから売り場の片隅じゃなくて
 どうやったら目に留まるかを考えてあげないと。

 
 ゴンドラは、ゴールデンゾーン・ショーイングゾーン・ストックゾーンにわかれるよね。

 ゴールデンゾーンって言うのは、目に付きやすく手に取りやすい場所のこと。
 ショーイングは、見せる場所でゴールデンゾーンよりも上の棚。
 ストックゾーンは、在庫を主に置く場所で、ゴールデンゾーンの下側。

 パッケージも使い終わってしまえば、ただのゴミだけど売り場の顔であることは確かだからね。
 人の顔が、正面と横から見て印象が違うのと同じで、商品の顔も角度によって表情が変わっていく。

 そう言うのも踏まえて、売り場をプロデュースしていくことが出来れば
 もっとお客様にも気持ちよく過ごしていただけるかもしれないね。

 一週間後、この一段目の売り上げの変化を検証しましょう。
 それと同時に、ショーイングゾーンと、ストックゾーンのプロデュースを宿題にします」


僅かな短時間に、手際よく演出していく高崎さん。



丁寧に教えてくれるのに嫌味がない。

ちゃんと今の現状を認めてくれた上で、
更に高みを求めるための指導をさりげなくしてくれてる。



そんな指導の最中も、お客様が最優先のモットーは変わることがない。




そんな高崎さんの仕事の姿勢に、
少しだけ憧れにも似た思いを感じた時間。



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