【B】姫と王子の秘密な関係
「遠野さん。
君のお父さんの夢を現実にするには、
ストアサブマネージャーの資格を持つ
スタッフが最低でも後二名必要なんですよ。
遠野さんは、オーナーの娘さんだ。
二か月後の認定試験に申し込みました。
受けてくださいね」
決定事項のように手渡された用紙。
ただ俯いてその用紙を受け取るものの、
気持ちだけは下降していく。
「檜野さん、もう一人の候補は檜野さんがどうかな?っと個人的に思っています。
受験して頂けませんか?
ストアサブマネージャー資格は、
当コンビニに置いてはバイト&パートスタッフの中での最高位の資格になります。
どんな資格でも消えることはありませんから、
将来何らかの形で再びコンビニ店員をする形になったとしても
当系列店では優位に立てます」
和羽にも小川は声をかけるものの、
その声は威圧的なものでも、強制力を感じさせるものでもない。
私はオーナーの娘だから、
断る権利は最初からないと決められているみたいで
心が苦しくなった。
「大学卒業までお世話になる予定ですから、
オーナーと店長の承認も頂けるなら、受験させて頂きます」
心が苦しく闇の中でもがく私とは違って、
和羽はそんな風にあたりさわりなく返答して一礼した。
それだけで小川の表情も少しだけ緩くなる。
「遠野さん、檜野さんはそう言ってるけど
君が逃げようなんて思わないよね。
オーナーと店長夫妻のお嬢さんなんだから」
オーナーと店長夫妻のお嬢さん。
小川の告げる言葉の端々が気にかかる。
イラっと感じさせる。