【B】姫と王子の秘密な関係



「いいよっ。
 音羽も遊んでたわけじゃないのは私も知ってるから。

 ちゃんと縫い物は終わって完成したよ。

 それより深夜勤務の後のイベント。
 今日も暑くなりそうだから倒れないでよー」

「そのつもり」



二人、ペットボトルのキャップを開けて
水分補給をしつつ、駅の中へ。

入ってきた電車に乗り込んで20分。
乗り換えすること5分。 


9時前には、イベント会場に到着。


会場前には、
すでにズラーっと人・人・人。


何処からこんなに集まったのよーつて思いそうな人数が集まってる。


そんなイベント会場の一角、同じようなキャリーを転がしてる集団が居並ぶ列に
私たちも並んだ。







おはようございます。
伊代【いよ】さま、いらしてますか?



乙羽【おとは】






メールを送信。



伊代さまって言うのは、
2年前から交流がある、私と和羽のコスプレ仲間。


キャリーの中身の正体は、コスプレの変身グッズ。
和羽に夜なべで作らせてしまった今日の変身アイテム。

コスプレ衣装。


乙羽って言うのが
私のコスプレをしている時のレイヤー名。






ご無沙汰しています。

今日の合わせ、
楽しみにしていますねー。


伊代






並びながら待ってる間に、
メール相手から、返信が届く。



そんなイベント仲間たちと今日の打ち合わせ宜しく、
連絡を取りながら会場を待つ時間。


待ってるだけでも、陽が高くなって
扇子でパタパタと風を送りあう。




「只今より、コスプレ登録専用ゲート開場します。

 受付の登録用紙に記入して、
 更衣室使用料を支払って、手続してください。

 なお、イベント公認登録済みレイヤーの証になりますので
 缶バッチつけてお楽しみください」




メガホンを片手に、呼びかけながら
列の後方まで移動していくイベントスタッフ。

ゆっくりと動き出した列に合わせて、
キャリーを転がしながらドアの方へ歩き続ける。


ドアの入口で、コスプレ登録用紙を手渡されて
そこ欄を鞄から取り出したボールペンで記入すると、
更衣室利用料と一緒に、スタッフに手渡して、番号札と缶バッジに交換する。



【女性用更衣室はこちら】




張り紙を追いかけながら、
向かった先で、私と和羽は今日のキャラクターに変身する。


今日の私と和羽は、
お気に入りの幕末恋愛シュミレーションゲーム『約束の大空』の
キャラクターたちを演じる束の間の時間。


今日の私は三人のヒロインの一人。
歴史が大好きな女の子、瑠花【るか】を演じる。


そんなわけで、相方の和羽には……
だんだら羽織に、髪を結いあげて総司君をご指名。


二人して和羽のお手製衣装に袖を通し、
髪型とメイクを施して、キャリーに番号札を括り付けて
クローゼットスタッフへと預けると、缶バッジをつけて
会場内をプラプラと歩き始めた。


すでに開場時間も来ていたみたいで、
会場内は、外にずらりと並んでいた人たちの熱気で蒸しかえってる。


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