【B】姫と王子の秘密な関係
だけど目立ちすぎるアキラさんと電車やバスで移動しながら、
周囲の値踏みする目ような視線と対峙し続けるのは
私の精神的にもマズそうだから。
「乙羽ちゃんの助手席?
それは楽しみ。
その助手席は、俺が座ってもいい場所なのかな?」
「構わないですよ。
って言うよりは、大歓迎かな。
普段は家族と、香寿が座るくらいなんで。
だけど私、愛車はまだ持ってないんで
行きつけのお店で、レンタルしてきますね」
そう言うと、駅前のレンタカーショップへと近づく。
そのお店に近づくと、
アキラさんは警戒するように中に入ろうとしない。
「アキラさん?」
「ごめん。
手続きしてきてもらってもいいかな?
レンタル代は、ここから支払って貰っていいから」
そう言って手渡された真っ白い封筒。
「アキラさん、ここのお金は大丈夫です。
私、会員価格何で安いんです」
そう言うと、いつもの様に店内へと入っていく。
受付で手続きを済ませて、
何時もの軽自動車を一台を借りてくる。
車内に乗ると、携帯をBluetoothで繋いで
音楽を響かせる。
敷地から車を出して、アキラさんを助手席に拾うと
そのまま街の方へと車を走らせた。
「偉そうなこと言った割には、軽自動車でごめんなさい。
車を運転するのは好きなんだけど、
軽自動車が一番、乗りやすくて。
小回りもきくしね」
「こちらこそ。
女の子に運転までさせて、申し訳ないな。
俺も車くらいは運転できるようにしておかないとかな」
「でも車って、やっぱり教習所に行く時間とかタイミングも必要だから。
私と香寿は、高校卒業前に通ったんです。
学校が提携してくれる自動車教習所もあったから」
車の中でそんな他愛のない話をしながらも、
ドキドキ感じる、
アキラさんの辛そうな表情が気にかかって仕方がない。
デートってどんなところに行くんだろう。
プランも何もないまま、街の中を車は走る。
「アキラさん。
私見たい映画があるんですけど、アキラさんの予定は?」
とりあえず、闇雲に街中を走り続けるのもどうかと思うので
思い切って、行先提案。
「映画館?
いいね、俺も最近忙しくて久しく行ってないよ。
映画館の最寄りは何処になるの?」
「地元にあるのはレインボーシネマズ」
「近くにSAKURAシネマズはあるのかな?」
「えっと二つ向こうの市にはあったと思う」
「遠すぎるかな?」
遠慮気に呟く、アキラさん。
だけど……何も悩む必要なんてない。
アキラさんは、レインボーじゃないところに行きたくて
私は、知り合いが多いこの町以外のところに行きたい。
深くその意味を考えることなく、私は二つ返事で
行先をSAKURAシネマズに変えた。