【B】姫と王子の秘密な関係
「乙羽ちゃん、凄い布の量だねー」
そんな風に声をかけながら、私の両手にズシリと重さを主張した紙袋を
ヒョイと自分の方に引き寄せると、アキラさんは何事もなかったように受け取って
歩き出す。
私が両手で持っていた紙袋2つは、今はアキラさんが片手で持っていて
隣あうもう片方の手は私が握りやすいように、手を差し出してくれてる。
ためらいながら、ゆっくりと手を伸ばすと
アキラさんは、再び微笑んで私の手をしっかりと握りしめた。
イベント以外で、こうやって異性と手を繋ぐことなんてなかった。
ねぇ、アキラさんデートって思っていいですか?
車内に戻った私たちは勢いで、別のお店へと足を伸ばす。
コスプレ専用の撮影スタジオ。
コスプレーヤーさんたちが、自分たちの世界を演出するのに
お役立ちの不思議空間。
洋風の世界、廃墟な世界、校舎の屋上風景など
いろんなシチュエーションの写真が楽しめる、建物丸ごとスタジオになってる空間。
衣装は持ち込みもOKだけど、
衣装がなくても、一部の衣装ならレンタルでも貸し出してくれる。
私たちらしいデートだよね。
それに……イベント以外で、きっちりと記念に写真を残してみたかったから。
「乙羽ちゃん、世の中にはこんなお店もあるんだね」
流石のアキラさんも、
この店にはびっくりしてるみたいだった。
建物に入ったら、その場所はすでに異空間。
いろんなジャンルの有名アニメのキャラクターたちになりきった人たちが、
一つの建物の中にひしめきあってる。
あぁ、男爵と執事だー。
あっちは、新選組の隊士たち。
向こうは、軍服来てる。
あぁ、あっちはオスカル様だー。
っと完コスされた人たちを見るだけで、血が騒ぐって言うか
一気にテンションが上がっていく。
「いらっしゃいませ」
受付のスタッフさんも、コスをして私たちを出迎える。
説明されるままに、手続きを済ませて
衣装ルームの鍵を借りると、
奥の衣裳部屋へと歩みを進める。
アニメのキャラクターの衣装から、ウィッグやかつら、小物までが
並んでいるその部屋で、
今日の衣装を選んで持ちだすと再び受付でレンタル代金を支払う。