【B】姫と王子の秘密な関係
14.フィールドワーク - 晃介 -
梁田前オーナーが他界されて、
契約終了となってから、桜川一丁目店は本部預かりとなり、
遠野オーナー側の準備が整い次第、
遠野オーナーの経営する二号店となることが会議で決定した。
梁田オーナーが経営していた二号店は、閉店が決まり
俺たち本部の人間は閉店準備と、
本部預かりになった店舗を管理するのに人員をさかれた。
二号店のスタッフには、梁田オーナー死亡により
閉店の旨を告げて、一か月後には閉店が決定。
近隣のライバル店には、ギリギリまで閉店情報が漏れないように注意を払いながら、
店内の在庫を微妙に調整し始める。
免許を持っているお店のみ販売できる、
タバコに関しても閉店前には一番注意を払う必要がある。
嗜好性の強い煙草は、売れる商品と売れない商品がくっきりとわかれる。
かといって、人気がないからといって
セール価格でさばくなんていう荒業が一切できないのが煙草。
未成年に販売した場合の、販売リスクが高いうえに
粗利率が10%程度が現状。
それ故に、慎重にならざるを得ない。
値段を安くしながら最後の最後まで商品を売って回収したいので
少ない品数の中、販売を続ける。
時にライバル店のオーナーや店長が、商品を自店舗で販売するために
仕入れを兼ねて購入に来ることもある。
各いう俺も、九月から研修に来て初めて
コンビニの一店舗の閉店業務を手伝う形になった。
一日、一日にと時間が過ぎるたびに
棚の上に溢れかえっていた商品はガラガラで、
災害時の商品がガラガラになった店内のように様変わりする。
商品のなくなったゴンドラは、一つまた一つと解体されて撤去されていく。
沢山の中に申し訳程度に残された商品は、日用品の液体洗剤ボトルなども
閉店当日の朝には100円へと値段を変えて最後の売り切り。
それと同時に、長い間店内に設置されていたATMが撤収されていく。
閉店当日の夜、その店に居たスタッフの殆どが終了して、
最後のお客様が帰られた後、暗闇に紛れるように開店以来一度も閉めることのなかった
シャッターをおろして、外へと灯りが漏れ出さないようにする。
店内で静かに行われる最後のセレモニー。
最後のお客様として、そのお店の店長が商品を購入して
レジを締める。
同時に閉店棚卸により最終在庫金額を確定して、
本部預かりとなった桜川一丁目店へと移動させる。
内装外装工事スタッフが一斉に店内に入って来て、
商品ゴンドラ・飲料ケース、弁当ケース、看板などを撤去して終了。
初めて体験した閉店業務は、
あっけないほど早く時間だけが過ぎて、
精神的な疲労感のみがずっしりと残った。