【B】姫と王子の秘密な関係
そんな精神疲労をやり過ごしながら、桜川一丁目店へのシフトを手伝い、
小川さんと受け持ち店舗をまわり、僅かに残った時間に
音羽さんのいるあの場所へと勉強会をするために顔を出す。
肉体的にも精神的にもハードなスケジュールの中、
音羽さんと過ごせるその時間だけが、俺の中で大きくなっていた。
あの乙羽ちゃんが、音羽さんだった。
そして一緒にいることから、香寿さんが、檜野さんだと言うことも
今の俺には感じて取れた。
だからこそ……どれだけ、しんどくても
勉強会の時間だけは、俺自身もパワーを充電するために死守する。
そして、その頃から慌ただしいスケジュール合間にもう一つ、
始めたことがある。
それが『フィールドワーク』と呼ばれる仕事。
店舗の外に出て、出来る限り情報を収集する。
桜川一丁目店が、遠野オーナーの二号店となるなら
俺も出来る限りの下準備をしたいから。
オフの時間を活用して、フィールドワークに勤しむ。
まずは周辺の情報収集から、交通量や、駅から店舗までの時間などを計測する。
交通量は、日中の14時頃の現在で30分に車が60台通過。
他の時間帯は未定。
子供たちの通学路に指定されているか?
近所にライバル店は存在するか?
学生たちの姿はどうだろう?
会社はまとまっているか?
家は周辺にどんな形で立っているか?
マンションか一軒家か?
人の気配は感じられるか?
街の空気はどうだろう。閑散としていないか。
そう言った情報を感じるたびに、メモ帳に書き留めながら
怪しまれないように、コンビニ店舗の制服に袖を通して一軒、一軒、
僅かなお菓子を手土産に対面で会話をしながらコミュニケーションをはかっていく。
自腹で手渡す僅かな手土産。
それはコンビニの自社オリジナル製品を選び、
対面で挨拶をした際に、リクエスト商品はないか?コンビニ求めることは何か?ご不便を感じることはないかなど、
対面だからこ読み取れる情報も仕入れていく。
それと同時に、来週からピックアップ商品のチラシを手渡しながら。
そんな調査を一人、
時間を見つけて行いながらデーターを集めていた。