【B】姫と王子の秘密な関係
「音羽さんが時間大丈夫なら、少しお茶していかない?」
そう言って声をかけて返事を待つ。
「時間はありますけど……高崎さんこそ、貴重な時間一緒に過ごしていんですか?
高崎さんに誘われて、断る理由ないんですけど」
少し戸惑いながら、俺にとって嬉しくなる言葉を紡いでくれる。
彼女と今、過ごす俺はアキラでも、早谷晃介でもなく、ただの高崎晃介自身。
何も知らない彼女が、素の俺自身を受け止めてくれる気がして
心が弾んだ。
二人並んで駅前へと歩いて移動すると、
早谷の系列が運営している、喫茶店へと入る。
俺の存在を知るスタッフに、視線を向けて
必要以上に関わる必要のないことを伝えると、
その後は、音羽さんと二人、ゆっくりと時間を過ごした。
試験勉強のこと、プライベートのこと。
アキラとしての俺しか知らなかったことを、
晃介としての俺自身に教えてくれた彼女の言葉が嬉しかった。
フィールドワークと言う名の情報収集は、
恋にも、ビジネスにも貴重な役割を持つ。
俺自身の秘密を俺から伝えらわれる日が来るのかどうかは、
今はまだわからない。
ただ……今この瞬間を大切にしたい。
それだけは確かな真実だから。