【B】姫と王子の秘密な関係




「いらっしゃいませ、おはようございます」

「いらっしゃいませ。
 本日、オープニングセールでおにぎりが、50円引きとなっております。
 いかかですか?」

「いかかですか?」


店内には、音羽さんたち最前線のスタッフたちの声が元気に響いていく。


本部からの応援スタッフは、商品の品出しのフォローやレジのフォロー。
外のお客さんたちの呼び込みなど次から次へと、仕事は尽きない。



中華まん・おでん・惣菜・手作り弁当。

幾ら経験者のスタッフが多いとはいえ、今回から新規募集したスタッフもいる。
通常より研修時間が少なかったスタッフたちをフォローするように、
カウンターの中でゆっくりと目を光らせながら、補助につく音羽さん。


順調に思えていた時、新人スタッフによるトラブル発生。


次に蒸しあがる時間までの、最後の1個だった豚まんを
緊張から床に落としてしまった新人スタッフ。


新人スタッフは、どうしていいかわからなくパニックになる。
立ち尽くして何も出来ない状況下に音羽さんがすぐにフォローに入る。


「大変申し訳ございません。
 豚まんは先ほど、私共のミスで床に落としてしまいました。
 次回、蒸しあがるまでには後10分ほどかかります。

 豚まんの他にお召し上がりになりたい商品はございますか?
 豚まんがご希望でしたら、レンジアップをさせて頂いても宜しいのでしたら
 今すぐ、ご用意させて頂きます」


そう言って注文したお客様の前に立って頭を下げる。
その隣に並んで、俺もゆっくりと頭を下げた。


「正直に言うてくれたら、俺もちゃんと納得するで。
 
 ほんなら、カレーまんも追加してくれるか?
 豚まんはレンジでええで。

 俺、からしも忘れんといてな」


険しい表情を緩めたお客さまに、商品を手渡して
同時に謝罪して見送ると、気持ちを切り替えさせるために新人スタッフには
事務所で飲み物を飲んで、気分転換するように指示して引き続き音羽さんの補助につく。


慌ただしく接客をしながらも、
時折、俺の方を見て嬉しそうに笑う。



こんな風に一緒に仕事が出来るのは今だけかもしれない。


俺も……神様がくれた、
この時間を大切にしていたくて。







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