スタートライン~私と先生と彼~【完結】
第二章 〜沙知〜
一目惚れ
「降りま〜す!!」
今日は遅刻するわけにはいかない!
なぜなら大切な高校受験の日だから。
中学3年の私、原田 沙知は高校受験の為にこの駅に降りようとしていた。
しかし、悪夢が待っていた。
電車から無理矢理降りたので、ホームに倒れ込み、鞄の中身もばらまいてしまった。
ゲッ、最悪やぁ。
ばらまいた参考書などを拾っていても、誰も手助けしてくれない。
朝の忙しいときに手伝ってくれるわけがないよな・・・・。
「はい。これどうぞ」
頭の上から声が聞こえた。
ゆっくり顔を上げると、大学生くらいの男性が私の受験票を持っていた。
かっこいい・・・。
茶色い少しくせのある髪は、短く切られていて清潔そう。
そして整った顔が、美しい。
「大慶高校受けるんやね」
その男性の声は低いけど、柔らかくて、私を包んでくれるようだった。
「はい」
私はお礼を言わなくてはいけないのに、頭が真っ白になって、言うことができなかった。
「ここ、俺の母校。頑張ってね」
その男性は受験票を渡してくれた。
「ありがとうございました。」
私は深々と頭を下げた。