スタートライン~私と先生と彼~【完結】
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「沙知、昨日はどうだった?」
ニヤニヤしながら理香が近づいて来た。
理香のその笑顔・・・何日か前にもこんなことがあったような気がした。
デジャブかと思うくらい、彼女は数日前の朝と同じような裏がありそうな笑顔をしていた。
「どうって、あんた・・・。 嘘までついて私と隆をくっつけたいの?」
「くっつけたいよ!」
毅然とした理香の態度に驚いた。
なぜ、理香はそこまで・・・。
「あんた、いつまで電車の人を捜してるんよ!」
その言葉に絶句した。図星だ。
「何言ってるん?」
負けじと言い返すものの、勝てる気なんてしなかった。
「二度と会えないかもしれない人を求めるより、目の前の笠野くんを見てあげたら?」
やっぱり私の負け。理香の言うことは正しい。
二人の間にしばらくの沈黙の時間が流れ、私は理香の目を見ながら、ゆっくりと話し始めた。
「もうちょっと・・・整理するのに時間ちょうだい・・・」
もうちょっと待って・・・。
どうにかするから・・・。
「沙知・・・ごめんね。きつく言い過ぎた」
理香はそう言って頭を下げた。
ここまで私のことを考えてくれている友達がいることは幸せなことだ。
私は、そう思った。
でも、私はあの人に会えない限り、完全には忘れられないような気がするの・・・・・。
この想いは、いつまで私の中に住み続けるんだろう。