スタートライン~私と先生と彼~【完結】
進路指導
放課後、私は職員室に来ていた。
それは、あることをするため・・・。
「斎藤先生、今いいですか?」
私は、自分の席に座り、何か書類をまとめている先生の背後から声を掛けた。
「どうした?」
先生、私の声に気付くと、すぐに振り返り、いつもの低いけど優しい声で返してくれる。
それだけで私の胸は通常のスピードで鼓動出来なくなってしまう。
「この問題、教えて下さい」
こんな問題、少し考えたらできるんやけど、どうしても今話したかった・・・。
だから、来てしまった。
怪しまれないようにできるだけ難しい問題を選んで・・・。
先生の教え方はいつもわかりやすいから、好き。
先生は、立ち上がり私の隣に立って、問題の解き方のヒントをくれる。
私は少しの時間で先生の事をたくさん見ようとしていた。
まつげ長いな・・・。
結構肌がきれいなんやな・・・。
「そっかぁ!」
少々わざとらしく、わかった振りをすると、先生も嬉しそうに「よかった」と目を細めて言ってくれた。
「ありがとうございました」
もう少し話していたいと思いながらも帰ろうとしていた。
これ以上一緒にいたら、心臓がもたない・・・。
そう思いながら先生の前から立ち去ろうとしたら、先生に呼び止められたので、一瞬にして体が硬直するのがわかった。
「原田!」
「はい」
私は呼び止められたことに驚いて返事するのが精一杯だった。
「べ・・・勉強頑張ってるか?」
先生は遠慮がちに聞いて来たその言葉は、私が今一番気にしている言葉だった。