スタートライン~私と先生と彼~【完結】
「ありがとうございました」
離れたくなかったけど笑顔で言った。私が先生の顔を見た瞬間、先生の手が私の頬に置かれた。
そして見つめられる・・・。
真剣な先生の眼差し・・・。
痛いくらいの眼差し・・・。
何、この状況!
「せんせ〜?」
先生に声を掛ける。
「あ・・・糸屑ついてるぞ・・・」
先生は動揺しながら私の頬の糸屑を取ってくれた。
「ありがとうございます」
先生、どうしたんやろう・・・。
何か話さないと、話さないと・・・。
私は何も話せず降りる駅に着いた。
「沙知〜おはよ〜」
何も話せずにいるこの状況をどうにかしたいと思っていたので、私のことを呼ぶ声が聞こえて「助かった」と思ってしまった。
この声は、理香だ。
「おはよ~」
振り返るとニヤニヤと笑っている理香がいた。
その瞬間、「助かった」と思ったのを撤回したくなった。