スタートライン~私と先生と彼~【完結】
学校に着くと、みんないつもと雰囲気が違う。
楽しかった3年間を惜しむように教室に居る。
もうすでに泣きそうやし・・・。
卒業式が終わったら、私たちの高校生活も終わる。
校長先生の長い話も懐かしく感じる。
3年間の思い出が頭を駆け巡る。
でも大部分が、先生との思い出。
もう・・・『蛍の光』なんて涙で歌えないよ。
教室に戻ってからも、みんなしんみりしていた。
でも誰も後ろ向きなことは言わない。
誰かが言うと、きっと教室中、涙でいっぱいになるから。
「卒業は別れではなくスタートだ。君らはこれからの人生でつまずく事もたくさんあると思う。でも、ここで学んだこと、一緒に過ごした友達がきっと支えになってくれるだろう。つまずいた時は遠慮せずにここに戻ってきたらいい。ここは君らの家だからな」
川田先生、反則やわ・・・。
そんな素敵な事を言わんといてよ。
あかん。
もう我慢できへんよ・・・。
涙で前が見えへん。
「斎藤先生も一言」
先生の挨拶?・・・もうあかんよ。
「あ、はい」
私は涙目で先生の方を見る。
「みんな卒業おめでとう。俺は、このクラスの副担任になれたこと、嬉しく思っています」
私も先生に出会えてよかったよ。
「どんな時も笑顔で、みんなで励ましあえるクラス。俺はこのクラスがめちゃくちゃ好きやったで!」
ホントにこのクラス最高やった。毎日楽しくて、楽しくて・・・。
「俺のわかりにくい授業も真面目に聞いてくれてありがとう」
先生の授業、わかりにくくないよ。
みんなわかりやすいって言ってたよ。
「先生の授業わかりにくくないで!」
「そうやで!わかりやすかった!」
「みんなわかりやすいって言ってたで!」
みんなが私が思ってることを言ってくれたことで堪えられなかった涙が溢れ出るのがわかった。
「そうか?ありがとう!同窓会する時は、川田先生だけじゃなくて俺も呼んでくれよ!」
「当たり前やん!」
もう、また涙が出てくるやん・・・。
絶対に目が真っ赤やん・・・。
まだ帰りたくないよ・・・。
みんな同じ思いなのか、教室から離れない。
クラス全員で写真を撮り川田先生とも・・・・。
「原田、頑張って、よかったなぁ。これから大変やろうけど、原田なら大丈夫や!何か迷ったら、学校に来いよ。斎藤先生もいるから、大学の事も聞けるしな」
『斎藤先生』という言葉を聞いてドキッとしたが、顔色を変えずに応えた。
「はい。ありがとうございました」
先生とも写真を撮りたくて、目を向けたが、先生の周りにはみんなが群がっている。
どうしよう・・・。