スタートライン~私と先生と彼~【完結】
「奥村くんよ・・・好きな女の顔色も伺えないようじゃダメなんじゃないか」
隆は、さきほどよりもさら険しい表情で、奥村くんに突っ掛かっていた。
「お前、なんなんだよ!関係ないやん!」
突然出て来た隆に怒るのはしかたないけど・・・端から見たら・・・ちょっとした修羅場じゃない?
「俺は笠野。さっちゃんが困ってるのもわからんの?」
私の思いもむなしく隆はさらに奥村くんに最後の一撃を加えた。
「・・・・原田さん?」
隆の一撃で奥村くんは我に返ったのか、私の顔を見て、力無く呟くように私の名前を呼んだ。
「ごめんなさい」
私の一言で、奥村くんは何も言わずに立ち去った。
はぁ、終わった。
私がため息をついていると、隆はすでに歩き始めていた。
「隆、ありがとうね」
私は、隆の優しさがなぜかやけに胸にしみて、後ろ姿に声を掛けるのが精一杯だった。
「気にしなくていいよ」
少し前を歩く隆は、右手を挙げてそう言った。
隆のそんな優しさ嫌いじゃないよ・・・・・。
でも、少し待って。
あなたの気持ちを私に伝えるのは・・・もう少し先にして・・・。
そんなこと言って、私は彼の気持ちに応えられる日は来るのかな・・・。
私の中には・・・先生の笑顔が消えずに残っていた。