スタートライン~私と先生と彼~【完結】
「数学を担当してくれる斎藤和寿先生です。
斎藤先生は本校出身で、今年、京府大学を卒業されました」
一瞬にして体育館中がざわめく。
うちの学校から現役で難関校の京府大学へ行ったのは、今までに俺しかいない。
そう、自分で言うのはなんだが、この学校では俺は伝説の男なのである。
しかも他の教師に比べると極端に若い俺が、その伝説の男ともなると、騒がしくなるのも無理はない。
そんな偉そうなことを考えながらも、俺の心の中は穏やかではなかった。
なぜなら、これから俺は挨拶をしなくてはいけない。
数十人の前で授業をするのとはわけが違う。1000人近くの人間の前で話したことなんて・・・去年の教育実習の時の挨拶した以来だ。
あぁ・・・緊張する。
自分の番が近付くにつれて、緊張はピークに迫っていた。