スタートライン~私と先生と彼~【完結】
第三章 ~隆~
アルバム
「隆、中学のアルバム持ってきたで〜」
俺に話し掛けるのは、高校に入ってからの友達の木下 健之(きのした たけゆき)。
今日は以前から頼んでいた中学のアルバムを持って来てくれたようだ。
「サンキュー、木下」
中学のアルバムを見せてもらって、あわよくば誰か紹介をしてもらおうという魂胆は、すぐに木下にばれた。
「これ、俺の彼女の理香だから紹介できないからな」
そう言って差した指の先の女の子は、お世辞抜きで可愛らしい子だった。だが、俺のタイプではなかった。タイプだったとしても、すぐにあきらめるだろうけど。
「へ〜かわいいやん」
「だろ?」
嬉しそうにいう木下の表情からして、自慢の彼女だということがわかった。
そして、自分も木下のように彼女自慢をしてみたいものだ。
木下の彼女のクラスの写真を見ていると、俺の目に一人の女の子が飛び込んで来た。
原田 沙知
写真の中の彼女は、ニッコリと笑って、まるで女神様のように美しくて・・・俺は一瞬で彼女に恋してしまった。
「隆、原田のこと気に入ったのか?」
じっと一人の女の子の写真を見つめている俺を見て木下は気付いたようだ。
俺は、隠すことなく、頭が飛んでいきそうなくらい何度も頷いた。
「木下!紹介してくれ!」
俺は手を合わせて、木下に必死に頼んだ。
「ちょうどいい。原田は理香の友達やから」
木下は笑顔で言ってくれた。
まじっすか!ラッキー!!
さっちゃんを紹介してもらえる!すでに『さっちゃん』と呼んでいる自分に驚いた。
高校2年の冬、ようやく俺にも春がきそうだ。