スタートライン~私と先生と彼~【完結】
「・・・捜してないんやね」
思わず出た言葉に自分でも驚いた。
「へ??」
さっちゃんが俺の顔を見る。
「前に電車乗った時、誰かを捜している感じやったから」
正直に感じていた事を言ってしまうと、さっちゃんは恥ずかしそうに俯いてしまった。
まずかった?俺って、空気読めてない?
しかし、さっちゃんは顔を上げ、俺の顔を見て、電車で捜していた人の事を話してくれた。
絶対に男だ。俺は確信した。
『会って話はしたの?』
『どんな人?』
『年齢は?』
『男?』
聞きたいことなんていっぱいある。
でも聞かない。いや、聞けない。
自分が傷付くのが嫌だから。
さっちゃんとの関係を壊したくないから・・・。
でもこの2年間、ずっと思われ続けてた奴が憎い。
そしてうらやましい。
俺に気を使って、男だって言わなかったんやろうな。
でもわかるよ。
会いたかった人が見つかって嬉しくて、その事を話したいのに全てを話せないから、全然嬉しそうじゃないんやもん。
さっちゃんは正直だから、顔にすぐに出るんよな。
そんな所も好きなんやけどな。
でも、俺はまた告白するチャンスを逃してしまった。
なんてへたれなんやろう。