スタートライン~私と先生と彼~【完結】
******
今日はさっちゃんの学校の文化祭に来ている。
もちろん、木下と圭と一緒だ。
とりあえず、手越さんにこの前の写真のお礼を言いたかったから、先に手越さんのクラスへ行った。
手越さんのクラスは、焼きそば屋。
かなり繁盛しているらしく、教室の中はかなりの人がいる。
「タケ〜」
手越さんが木下を呼びながら来てくれた。
「この前はありがとう」
「お礼なんていいのに。それより変な事に使ってないでしょうね?」
疑いの目を向けられて、俺は毅然とした態度で答えた。
「使ってません」
嘘です。魔がさして一度だけ・・・。
「そんなことより、笠野くん、頑張りなさいよ!」
思いきり背中を叩かれて、俺は動揺を隠せなかった。
「は、はい」
同級生に『はい』なんて言ってるし・・・。
そして木下を置いて、圭と一緒に、さっちゃんのクラスへ行く。
さっちゃんクラスはだんご屋らしい。
混雑した教室に入るなり、橋本さんの嬉しそうな声が聞こえた。
「圭、こっち!」
いつの間に圭と橋本さんは、あんなにラブラブになっていたんだ?
そして橋本さんの隣には、さっちゃん。
うわぁ・・・きれいだ。
さっちゃんは濃紺の浴衣姿で俺の目の前にいる。
やばいよ。色っぽい。
チアの衣装とはまた違った魅力があふれてる・・・。
周りの男の視線を感じる。
見るな!俺のさっちゃんや!・・・・・・『俺の』じゃないけど・・・。
俺はさっちゃんに近づいた。
「さっちゃん、かわいいね〜」
ほんまにめちゃくちゃかわいい。
「ありがとう。あっ、おひとついかがですか?」
照れながらお礼を言った後で、すぐに営業スマイルでおだんごを勧めてくれた。
こんな可愛い売り子さんに、こんな可愛く言われたら、何本でも買っちゃいっますよ!
「あっ、貰おうかな?」
「ありがとうございます」
さっちゃん、ほんまにその笑顔は反則やで。
隣を見ると圭と橋本さんが何やら話しているが、圭の表情は変わらない。
圭もだんごを買うのか?
どうも圭と甘いものが繋がらない。
「圭は何本食べる?」
「5本」
ご、ごほん?
何?
売り上げに貢献するため?
やっぱり、俺が思っている以上にあの二人の絆は強いってことなのか?
俺がそんな事を考えていると、さっちゃんが俺の顔を覗き込んでいた。
「隆は、何本食べる?」
・・・ここは負けるわけにはいかない。
「5本」
右手を思い切り開き、宣言した。
「大丈夫?」
心配そうな顔で聞いて来たさっちゃんに、俺は強がった。
「あぁ、大丈夫やで」
「ありがとうございます」
さっちゃんが、だんごとお茶を用意してくれている間、俺は圭と席を探して、座っていた。
俺がさっちゃんと話している時に気になることがあった。