スタートライン~私と先生と彼~【完結】

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今日はさっちゃんの学校の文化祭に来ている。

もちろん、木下と圭と一緒だ。

とりあえず、手越さんにこの前の写真のお礼を言いたかったから、先に手越さんのクラスへ行った。

手越さんのクラスは、焼きそば屋。

かなり繁盛しているらしく、教室の中はかなりの人がいる。


「タケ〜」


手越さんが木下を呼びながら来てくれた。

「この前はありがとう」


「お礼なんていいのに。それより変な事に使ってないでしょうね?」


疑いの目を向けられて、俺は毅然とした態度で答えた。


「使ってません」


嘘です。魔がさして一度だけ・・・。


「そんなことより、笠野くん、頑張りなさいよ!」


思いきり背中を叩かれて、俺は動揺を隠せなかった。


「は、はい」


同級生に『はい』なんて言ってるし・・・。

そして木下を置いて、圭と一緒に、さっちゃんのクラスへ行く。

さっちゃんクラスはだんご屋らしい。

混雑した教室に入るなり、橋本さんの嬉しそうな声が聞こえた。


「圭、こっち!」

いつの間に圭と橋本さんは、あんなにラブラブになっていたんだ?

そして橋本さんの隣には、さっちゃん。


うわぁ・・・きれいだ。


さっちゃんは濃紺の浴衣姿で俺の目の前にいる。

やばいよ。色っぽい。

チアの衣装とはまた違った魅力があふれてる・・・。

周りの男の視線を感じる。


見るな!俺のさっちゃんや!・・・・・・『俺の』じゃないけど・・・。


俺はさっちゃんに近づいた。


「さっちゃん、かわいいね〜」

ほんまにめちゃくちゃかわいい。


「ありがとう。あっ、おひとついかがですか?」


照れながらお礼を言った後で、すぐに営業スマイルでおだんごを勧めてくれた。

こんな可愛い売り子さんに、こんな可愛く言われたら、何本でも買っちゃいっますよ!


「あっ、貰おうかな?」

「ありがとうございます」


さっちゃん、ほんまにその笑顔は反則やで。

隣を見ると圭と橋本さんが何やら話しているが、圭の表情は変わらない。


圭もだんごを買うのか?


どうも圭と甘いものが繋がらない。


「圭は何本食べる?」

「5本」

ご、ごほん?

何?

売り上げに貢献するため?

やっぱり、俺が思っている以上にあの二人の絆は強いってことなのか?

俺がそんな事を考えていると、さっちゃんが俺の顔を覗き込んでいた。


「隆は、何本食べる?」

・・・ここは負けるわけにはいかない。

「5本」

右手を思い切り開き、宣言した。


「大丈夫?」


心配そうな顔で聞いて来たさっちゃんに、俺は強がった。


「あぁ、大丈夫やで」

「ありがとうございます」


さっちゃんが、だんごとお茶を用意してくれている間、俺は圭と席を探して、座っていた。

俺がさっちゃんと話している時に気になることがあった。

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