スタートライン~私と先生と彼~【完結】
めちゃくちゃ痛いくらいの視線を感じた。
なんだ?
鋭い視線は、ドアの近くに立っている男から発せられていた。
誰だあいつ?
今度は鋭い視線とは全く違った優しい眼差しで、さっちゃんの方を向いている。
そいつの視線を感じたのか、さっちゃんが振り向き目が合うと恥ずかしそうにしていた。
俺はさっちゃんに誰かを聞き出した。
副担任ねぇ・・・。
新卒・・・つまり、今年の春からこの学校にいる。
点と線が繋がった。
さっちゃんがあの男を見る視線の柔らかさといい・・・。
あいつは、さっちゃんが捜していた『電車の人』ではないかと感じた。
俺がいろいろと考えてる横で、圭はだんご5本を平らげていた。
「圭、お前もう食ったのか?」
俺が圭の目の前の皿を見ながら、唖然としていると、奴は平然としていた。
「あぁ、うまいぞ。隆、食べないならもらうぞ」と俺のみたらしを1本手に取った。
なにこいつ!
甘いものが好きだったのか?
結局、俺は3本食べただけだった。
圭が7本食べたのは、言うまでもない。
ゆっくりしたかったが、店が混んでいたので、出ることにした。
俺はあいつの横まで歩いて行き、わざと聞こえるように
「さっちゃん、またメールするね」と言ってやった。
そして最後に、あいつに宣戦布告して帰ってきた。
「絶対に負けませんから」
何をするにも慎重な俺は、思いつきで行動することがなかっただけに、自分がとった行動に我ながら驚いた。
あいつは呆気に取られた顔をしていた。
絶対に負けない!!
さっちゃんが捜していた男があんなに近くにいるとは・・・。
俺なんてメールのやりとりだけでだし。
しかも手越さんから、さっちゃんに黙って写真をもらってるし・・・。
なんて情けないんや・・・。