スタートライン~私と先生と彼~【完結】
「お兄ちゃん、またクリスマス一人ぼっちなの?」
こいつは顔に似合わずデリカシーがない。リビングのソファに寝転がりながらテレビを見ている俺に、爆弾を落としたのは俺の妹。
笠野 涼(かさの りょう) 高校1年生
「涼だって彼氏いないから一人なんやろ?」
俺は姿の見えない相手に嫌味っぽく言ったつもりだったが、通用しなかった。
「残念でした〜。友達とパーティーするの!」
厭味っぽく言ってるが、結局友達とじゃないか!なんて言うと、またうるさいから、もう言わない。
「はいはい、よかったね」
もうさっさと、どっか言ってくれ!どうせ、俺はひとりぼっちですよ。
「お兄ちゃんも彼女作ったらいいのに。紹介してあげようか?お兄ちゃんのことを気に入ってる子、結構いてるんやで」
初耳だ。
というか、俺はお前の友達に会ったことないのに、なんで俺のことを知ってるのかが疑問だ。
「あっそう」
あいにく俺はさっちゃん以外には興味がないんや。
「つまらないの〜。お兄ちゃんさ、妹の私が言うのもおかしいけど、割と男前なんやから、その気になったら彼女なんてすぐにできるで!」
「『割と』が余計や」
高校に入ってからも、同じ高校の数少ない女の子からや、他の学校の子から告白されたことがある。
俺さえ『Yes』と言えば、彼女はできる。
でも俺はさっちゃんじゃないとダメなんや。
「ははっ、ごめん、ごめん」
笑いながら涼はリビングから出ていった。
俺だって、さっちゃんに告白したいよ。
でも、今は時期的に無理だし、受験生でなくても、文化祭の時のあの新任教師に向けられた目を見てしまったら・・・・・・。
勝ち目なんてない。でもせめて繋がりだけは持っておきたい。