スタートライン~私と先生と彼~【完結】
初詣は大晦日の夜から行くことになり、待ち合わせは19時にして食事をすることにした。
手越さんから、さっちゃんを迎えに行ってあげてと言われていたので、今さっちゃんの家へ行くところ。
俺は久しぶりに会えるので朝からテンションが上がっていた。寒さなんて感じていないが、今シーズン一番の寒さらしい。
家の前に着き、インターフォンを鳴らすか迷ったが、彼氏でもない男が夜に来て出掛けるのもあまり親としてはいい気がしないだろうから、電話をした。
それに『友達』と行くと親御さんに話していたとしたら話がややこしくなるし。
俺、どんだけ気を使ってるんや!
「もしもし」
『もしもし、隆?どうしたん?迷った?』
あぁ、この優しい声・・・久しぶりや。テンションがますます上がる!!
「いや、今着いたよ」
『あっ、そうなん?じゃあ、今出るね』
そう言うとさっちゃんは電話を切った。電話を切って間もなく、さっちゃんが玄関のドアを開けて出て来たと思ったら・・・。
「あら、こんばんは〜。隆くん?男前やん!」
お、お母さん?
「ほんまや〜。姉ちゃんの彼氏めっちゃかっこいいやん!」
弟さん?えっ?彼氏って?
「お母さんも、聡も恥ずかしいからやめてよ」
さっちゃんは止めるのに必死。
俺は3人のやり取りに唖然。
「あっ、申し遅れました。沙知の母で〜す」
「弟の聡で〜す」
か、軽い。
本当にさっちゃんの家族なんだろうか?
「もういいって!」
さっちゃんは、二人を家の中に押し込もうと必死になっていた。
「いいやん!あんたの彼氏が来てくれるなんて初めてなんやから!」
いや、彼氏ではありませんよ・・・。彼氏にはなりたいけど。
「だーかーらー・・・」
さっちゃんが話そうとしても二人は喋り続ける。
「あの・・・」
俺は、申し訳なさそうに声を出すと、今まで喋りまくっていた二人が黙り、俺の方を向いた。
「あの・・・笠野 隆といいます。沙知さんとは友達です」
『友達』だなんて言いたくなかった。
「あら、彼氏じゃないの?残念」
お母さんと弟さんは、とても残念そうな顔をしていた。
「じゃあ、お母さん行ってくるね」
静かになった二人に手を振って、俺らは歩き出した。
「はぁい。じゃあ、隆くんよろしくお願いします」
「はい。わかりました」
俺は、振り返り言うと、ペコリと頭を下げてさっちゃんと共に歩き始めた。
俺は原田家の大切なお嬢さんを預かるという使命を負った。
「隆、ごめんね」
形のいい眉を寄せて、申し訳なさそうに謝るさっちゃんもまたかわいい。
「いいやん。賑やかで」
本当に賑やかで楽しそうな家族やと思った。